第28回美人画研究会

2022年5月29日(日) 13:30~17:00

会場: 森下文化センター 第1研修室
テーマ: ルッキズムとジェンダーレスについて考える

 「美人」という言葉がルッキズムの観点から物議をかもしている昨今ですが、「美人画」という表現をどう考えるのか。ということで、クリエイティブ会のメンバーが集まってこのテーマについて議論をいたしました。

 「美人画」は伝統ある日本絵画のひとつのジャンルが現代に続く美術作品です。現実社会で「美人」と言及する事とは異質であり、次元の異なるものです。また、「美人画」は単に女性美を描いたものだけでなく、美しい情景や心象の人物画なども含まれています。
 何を美しいと感じるかは千差万別であり、美しいものを描きたいという感情は太古から人類に備わった自然な感情です。そのため「美人画」という表現は、ルッキズムという差別とは結び付かないと思われます。しかし「美人」という言葉は、使用する場面については十分配慮していきたいと思います。

 今回のもう一つのテーマ、「ジェンダー問題を考える」では、メンバーがそれぞれの考えを自由に発言しました。男性と女性の本能の違いを科学的に証明された数値から語る人あり、反論する人あり。「男性でも女性でも関係なく美しい人を美人と言うのだ」という意見に「いや、美人と言ったら女性しか考えられない」という人あり。このように活発な意見交換ができました。

 そして、今回の描画テーマの「ジェンダーレス美人」の発表となりました。以下のようなジェンダーレスな表現がありました。

 

①子供の少年時代は男女の区別なくジェンダーレスな時代。ロン毛の巻き毛が可愛くて女の子に間違えられた少年は自分の息子の子供時代。ボーイジョージの仮装をした姿も。(田中晃さん)

②襟付きのシャツ姿でショートカットの女性。線が細く華奢なイメージの男性。デヴィッド・ボウイや栗原類のようなイメージの男性。(松永伸子)

③宝塚の女性がする異性装をテーマにアニメなどに登場する女性騎士など。(城戸崎雅崇さん)

④悟りを開くために修行している観音菩薩は、装飾品を身につけ美しいので女性に勘違いされるが、本来は男性である。(河合直樹さん)
※宗教上は男女の性別を超越した存在となっているようです。

⑤トランスジェンダーの美青年、井手上漠さんの女性としての姿を虹色の光、虹色のシャボン玉というはかなく美しいイメージに重ねて。(井手晴海さん)

⑥本木雅弘さんのような美しい目をした人物を、男性でも女性でもない雰囲気に描きたいと思った。着る物は敢えてゆったりとしたグレーを選んだ。(東観崎繚さん)

⑦少年のようなイメージのショートカットの人物をイラストタッチに描き、敢えて顔の一部を隠して秘密めいた雰囲気を出した。色はグレー。(斎藤忍さん)

 

描く人によって様々なジェンダーレスの捉え方があり、とても興味深かったです。

「ジェンダーレス美人」の個別作品は、こちらのページに掲載予定です。
 少々お待ちください。